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選挙の度に強くなってきたカンボジアのフンセン体制だが(3/3)
そして前回のカンボジアの総選挙は2008年に行なわれました。

筆者もちょうどカンボジアを訪れていましたので憶えています。
すでに選挙時の暴力は減り、脅しがこれに代わってきたと報道されましたが、
前3回に比べて、いっそう平穏に行なわれたようです。

結果は、人民党が90議席(58%)とついに過半数を獲得、
SRPは26議席(22%)、その他3党で残りの7議席を取りました。
与党人民党の圧勝です。1993年の第1回選挙でトップをとった
フンシンペック党は、すでにラナリットも去り、2議席に激減しました。

その2年前の2006年に、フンセンは憲法を改定し、
議会では単純過半数で内閣を組めるようにしていましたので、
選挙後の組閣は簡単でした。

フンセンはついに、かつてのバックとなったベトナム共産党並みの
1党独裁に近い体制を完成させたと見られました。

@@@@@

そして今年、2013年7月、5回目のカンボジア総選挙が行なわれました。

選挙の度に強くなってきたカンボジアのフンセン体制だが(3/3)_d0159325_13424686.jpg

その前に、28年にわたる長期政権の下、独裁的地位を固めた
フンセンは、「74歳まで、あと13年首相を続ける」と表明しています
(以前は90歳までやると言っていましたが・・)。

対外的にも、ベトナムや中国と近しくして、隣のタイを
巧みにあしらうなど、リーダーシップを固めてきました。

@@@@@

2013年の総選挙前においても、アメリカの議会からは、
フンセン体制の“できあがった”選挙をけん制するために、
年7300万ドル(70億円)の援助をカットせよとの声も
上がりましたが、かつてのクリントン政権同様、オバマ政府は
明白な行動は取りませんでした。

カンボジアの外務大臣は、これに対して、
「アメリカが援助するかどうかは、アメリカの勝手でしょう。
彼らが何と言おうと、カンボジアの未来は、我々が決めるのです」と、
中国から数十億ドルの援助を受けているせいか、
意気軒昂でした。

今回は欧米諸国は、選挙監視団は組織しなかった
もようです。選挙監視団が行って見て、結果的に認めるとなると、
選挙結果が正当なものと評価されたと取られるからです。

@@@@@

今回2013年の選挙結果は、与党人民党68議席、
野党CNRP(カンボジア救国党)55議席という
結果が出ました。

カンボジア救国党は、国外に逃れていた
サム・ランシーが、昨年自身の「SRP」に「人権党」を
加えて、成立させたものです。

これで、人民党の4連勝となりましたが、その差は
前回2008年の選挙時の90対29から、68対55へと
大きく縮まりました。
CNRPの得票率は、人民党の49%に対して
44%でした(CNRPは、63対60で
自分たちが勝ったはずだと言っていますが・・)。

@@@@@

「驕れる者は久しからず」と言われますが、2008年の選挙で
独裁的地位を不動のものにしたストロングマン、フンセン体制も
ピークを過ぎてきたのでしょうか?

今までと違って、今回は野党がボイコットする意向の
議会運営について、フンセン首相が、野党の党首
サム・ランシーと5時間も話し合ったと言うのは、今までに
なかったことでしょう。

選挙の度に強くなってきたカンボジアのフンセン体制だが(3/3)_d0159325_13414684.jpg

カンボジアの変化が動き出したように見えます。

@@@@@

今年の6月、選挙前のカンボジアのシェムリアップに行ったときの
インテリのカンボジア人の言葉が、心に残っています。
「みな、フンセンにはもう飽きたというのが本音だ。
でも彼に代わる人間がいない。
変なのが出てくるなら、フンセンの方が安心だ」と言うものでした。

2009年のリーマンショック後の凹みを乗り越え、
フンセン政権下でカンボジアは6%を越える経済成長を
達してきています。

フンセン首相が仮に失脚するなら、
再びカンボジアの国内が混乱する恐れがなお
彼らの頭に残っているのでしょう。
でも、28年も経てそろそろ代わってもらいたい、と言ったところでしょうか。

野党カンボジア救国党の人気は、都市部だけではなく、
今回は、サム・ランシーと組んだ旧人権党の人権活動家
ケム・ソカーの人気も加わり、農村部でも伸びたようです。

@@@@@

カンボジアの変化の兆しは、メディアが限定された国において、
若い層によるインターネット、ソーシャルネットワークの活用により
もたらされた面が大きいようです。

有権者960万人のうち、150万人はクメール・ルージュの内戦も
知らない若い層でした。
カンボジアでも安くインターネットに接続できます。
フェイス・ブックの利用者は75万人に達すると言われます。

選挙の度に強くなってきたカンボジアのフンセン体制だが(3/3)_d0159325_1344128.jpg

かつて、フンセン首相は、ベトナムの支援を背景に伸してきました。
野党は、ベトナムの影響排除をテーマに闘ってきました。
しかし、もはやそういう時代ではないようです。

2015年はアセアン市場統合を控えています。
若い層の国境を越えた経済的価値観が、旧い内戦の怖れや脅しを
超えていく時代に入ってきたように見えますが、どうでしょうか?

 「国産車第1号誕生、工業化に入るカンボジア 2013-6-28」
  http://uccih.exblog.jp/19085963/

(終わり)
by ucci-h | 2013-10-04 13:44 | ミャンマー・ラオス・カンボジア | Comments(0)
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