事実でなくても、もっともらしく聞こえると、
人を行動に駆り立てる。
「ともかく帰っておいでよ!
お前たちはタイの軍事政権の兵士に捕まり、
ひどい目に遭うよ」という母国の
母からの電話で、タイで働いていた
カンボジア人労働者の何人が、国境の街
アランヤプラテートを目指したことだろう?

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タイは、外国人労働者なしには経済は回らない。
建設現場や漁業関係の職場に行けば、ほとんどが
近隣諸国からの外国人だ。
労働省雇用局の数字で把握されているだけで、
タイには223万人の外国人労働者が働いている。
ミャンマー人がほぼ8割を占めるが、カンボジア人も
18%ほどを占める。
「タイでは外国人労働者を雇いにくくなる!? 2013-1-9」
http://uccih.exblog.jp/17594185/
タイでは、不法入国労働者の登録を進め、
把握に努めてきてはいるが、なお不法入国労働者は
多いはずだから、彼等も含めると、
タイでの外国人労働者の数は、300~400万にのぼり、
タイの労働力の1割近くを占めることになるのだろう。
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タイで5月22日に軍事クーデターが起き、
軍事政権となり、6月9日(月)には、一連の改革の動きの中で、
外国人労働者の問題を扱う委員会も発足した。
この委員会は、子供労働や人身売買を取り締まろうという
ものだが、「タイの軍事政権は、カンボジア人労働者を
きつく取り締まることになる」という噂となった。
噂が信じられやすい背景はある。
カンボジアとタイは、例の国境の係争寺院「プレア・ビヒア」を
巡って、軍隊は対立しがちである。
また、タイの軍が嫌うタクシンは、カンボジアの
フンセン首相に近い。
6月前半だけで、タイの国境の街アライヤプラテートから
カンボジア側のポイペトへのルートを中心に、
20万人近く(実際は5~6万人ほどかもしれないが)の
カンボジア人の“エクソダス”(脱出)があったという。
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タイの経済界にとっても大きな問題となる。
軍事政権は、この噂を事実無根と取り消しに
やっきとなった。
そのため、6月20日頃から、いったん帰国した
カンボジア人の一部はタイに戻り始めたようだ。
噂の根源は、不法労働者の送り出しをやっている
ブローカー筋かと見られる。
いったん帰国させ、また送り出せば、それだけ手数料が
稼げるからだ。
これに呼応するかのように、6月20日(金)、
カンボジア政府は、パスポートの発行費用を
これまでの高額な135ドルから、4ドルに大幅に引き下げた。
カンボジアにとっても出稼ぎ労働者の減少は困ることである。
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不思議なのは、外国人労働者の8割を占める
ミャンマー人の漁業の街サムート・サコンなどの
コミュニティーでは、カンボジア人ほどの動揺が起こらなかった事である。
「外国人労働者の登録期間があったが・・ 2011-8-17」
http://uccih.exblog.jp/14366912/

サムート・サコンのミャンマー人は、2007年、タイ警察の
取締りで700人が逮捕された経験を持つ。
ミャンマー人の方が、情報により通じていたのだろうか。

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タイの外国人労働者の問題は、社会保障の適用など
ゆっくりではあるが、徐々に改善していくのだろうが、
むしろ、タイの経済運営と、ミャンマー、カンボジアなどの
経済成長との間の、労働力獲得の綱引きで決まっていきそうだ。
今のタイはうかうかしてはいられない。