円安を背景に再び高値に挑戦して来たが、
タイの株式市場は、2014年になって上がり、
過去の高値近くまで来た。
ここ数年の動きを振り返ってみよう。
SET指数で見ると、
昨年2013年5月のピーク1,643ポイントから、
今年2014年1月のボトム1,230ポイントまで、
昨年後半は、ほぼ半年で、-25%の調整を行なった。
その前、2011年10月の底値862ポイントから、
タイ貢献党政権下の好景気の時期の2012~13年前半に、
1年半で90%も上がったあとの、昨年後半は調整期だった。
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タイ貢献党政権のポピュリスト政策の祭りの後は、
2013年後半から2014年にかけては、
経済にもマイナス面が残り、GDPも伸びず、
企業収益も伸び悩みに入っていた。
なので、今年1月の時点では、調整幅(-413ポイント)は、
その前のラリーの上げ幅(+781ポイント)の半分強に達し、
もう少し調整が続くかと思われた。
しかし、今年の初めにそこを打った相場は、
この9月の1,584ポイントまで、9ヶ月間で
+354ポイント、29%上昇し、
2013年5月の史上最高値まであと59ポイントに迫った。
株式市場には、不思議に半年くらい先の先見性がある。
年初の底入れ時点では、インラック政権も行き詰まり、
年央あたりには政権交代など変化が訪れると読んでいたことになる。
事実、クーデターが起き、インラック政権が去ったのは、5月下旬だった。
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今年のラリーの背景には、軍政権に代わり、
経済の立て直しが図られようとの期待が大きくある。
前タイ貢献党の経済失政から見れば、まともな
政策を展開していけば、経済成長は回復するだろう。
もっともここにきて、上げ相場も一服している。
軍政権のハネムーンの時期が終わったというより、
株価は3割近く上げたが、企業収益が十分ついてきていない。
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SET(タイ証券市場)上場全銘柄の加重平均指数である「SET指数」の
実績PER(株価収益率)は、現在18.2倍にまで上がってきている。
2013年1~4月に高値を付けに行った時のPERが、19.2~18.2倍だった。
予想利益ベースのPERでも、年初の10倍ほどが、15倍ほどに上がってきたと見られる。
一方、2011年9~11月の底値圏の実績PERは、10.9~11.7倍と
低かった。2014年1月の底値の時は、14.3倍。
2003年以降の12年間ほどのタイの株式の評価をたどってみても、
2008~2009年のリーマン・ショック時の混乱
(PERは6.3倍から27倍と、株価の変動により大きく振れた)を
除けば、おおむね10倍から19倍のレンジ内で展開してきている。
現在のタイの株価の評価は、企業収益の向上を
やや先取りした水準に来ている。
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利益水準と株価水準の比較のPERで気になるのは、
タイの新興市場「MAI」市場のPERである。
MAI市場(代替投資市場の略)は2004年に発足した
上場基準の緩やかな、いわば2部市場。
中小企業中心に105社ほどが上場されている。
時価総額は、現在3,350億バーツ(約1.1兆円)と、
第1部市場の14.2兆バーツ(約46.8兆円)の2.4%に過ぎないが・・。
このMAIインデックスの実績PERが現在80倍という高さに達してきた。
年初来+97%と、ほぼ倍の値上がりをした。
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MAI市場の上場企業はまだ利益に出ていない会社もあり、
全体のPERは高くなりがちだ。PER100~200倍台の銘柄も見られる。
それでも、2004~2012年の間の実績PERは、7~22倍ほどで来た。
2013年前半になって、1部銘柄は買い進まれたので、個人の資金
中心にMAI市場に流れ込み、PERは、2013年5月の1部市場のピークに向け、
30倍から34倍へ上がり警戒信号を発していた。
その後の調整で20倍台後半に落ち着いたが、
今年の年初来の上げで、30倍→40倍→50倍→80倍へと
駆け上がったことになる。
2014年前半のMAI上場企業全体では減益である。
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株価の先行きは神様しかわからない。
今後、タイの株式市場は、企業収益が株価水準に追いついていくのか、
はたまた企業収益が伸びず、株価は調整場面を迎えるのか、
年末から来年にかけては、やや警戒しつつ見て行きたい。