「テスコ」社の利益過剰計上事件が起きた。
シティー(イギリスの金融界)を揺らすだけでなく、
世界の小売業界に対して大きな動揺を与えている。
ここアジアでのテスコの稼ぎ頭であるタイにおいても
同様である。タイの「テスコ・ロータス」の先行きに対し、
いろいろな思惑が出てきた。
テスコは、アメリカのウォールマートに次ぐ、世界第2位に
位置するハイパーストア・チェーンである。
世界12カ国に進出しており、アジアは稼ぎ所である。
タイの「テスコ・ロータス」は、韓国、マレーシアを凌ぎ
アジア第一の店舗チェーンになっている。
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しかし、テスコの業績は、ここ数年停滞してきた。
本国英国(シェア30%近く)で、アルディ、リディといった
ドイツ系ディスカウント・ストアにシェアを奪われている。
小売業は、アメリカでもどこでも、時代と共に企業の興亡が大きい。
この2015年度(2月決算)にはいって、厳しい中で、
テスコは、仕入れ業者からのプロモーション支払い
(良い棚を提供してやる見返りに前払い金を増やさせる等)を
推進して行った。
これが結果的に、上半期の2.63億ポンド(約480億円、
今期分はうち1.18億ポンド)の過剰利益計上となった。
仕入れ費用の計上よりも、前倒しで仕入れ業者からの
多くの支払い収入を計上してしまったのだ。
後日これを修正した結果、テスコの上半期(3~8月)の決算は、
税前利益で前年比92%の減益となった。
株価は、この1年で400ペンス近くから175ペンスへ
半値以下になってしまっている。
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英国小売り大手テスコの業績悪化、利益過剰計上事件を
受けて早速、テスコ全体ないしはテスコ一部資産の売却思惑が
起ってきている。
テスコ本体は、債務残高(2014年2月末)が354億ポンド
(6.5兆円近く)にのぼり、総資産の70%にも達しているので、
業績悪化でキャッシュフロー(内部で生まれるお金)が減少すると、
年間5億ポンドになる金利支払いなどが苦しくなると見られるからだ。
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その場合、①企業売却から、②パートナーシップを受け入れて資金を導入する、
また③海外の資産を売却するなどのオプションがあるが、
テスコは、今期中(2015年2月末まで)に何らかの策をとるかと見られる。
アジアの資産は稼ぎ頭だけになかなか手放さないだろうが、
パートナーシップの受け入れも含めて、ひとつのオプションになる。
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タイには、セントラル・グループ、CPグループ、それにタイ・ベバレッジの
消費・流通大手3グループが事業の拡大に積極的だ。
「タイ流通国内資本の巻き返し始まる 2013-4-26」
http://uccih.exblog.jp/18648017/
セントラル・グループは、ロビンソンなどのデパート、
セントラル・ショッピング・モールを各地に持っている。
かつて自ら作ったハイパー・チェーン「ビッグC」を
フランス資本に譲渡したこともあり、ハイパー・チェーンを持ち、
アジア全体に進出したいところだ。
CPグループは、セブン・イレブンを持ち、最近「マクロ」倉庫型チェーンを
買い取った。
CPは、ロータスの元々の設立企業であり、取り返したいところだが、
マクロ買収に大金を投じたばかりである。
タイ・ベバレッジは、タイ・トップのチャーン・ビールの会社だが、
シンガポールのフレイザー・ニーブも傘下に入れている。
流通業にも手を出したいとも見られている。
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テスコが、タイの事業を全部ないし一部譲るとすれば、
ウォルマート(米)、デイリー・ファーム、ジャーディン(香港)、エーオン(日)
など外国勢も触手を伸ばしそうだが、
タイの中では、資金的に余裕がある
セントラル・グループが一番手と見られる。
仮にテスコ・ロータスがタイ資本の傘下となれば、
マクロ(以前はオランダ資本)に続いて、ロータスも国内資本の
買戻しとなる。外国資本で残るのは、「ビッグC」を営む
フランスのカシノ・グループだけとなる。
タイの華僑系資本はどこも意欲的だ。
『Tesco顧客ロイヤルティ戦略』なんて本を出版して、ブイブイいわせてたのに・・・
マクドナルドやカルフールの様な、ボリュームゾーンと安さのみの巨大企業の方法論が、限界にきているのかも(+_+)
タイではカルフールの品揃えはお世辞にも褒められたものでは
ありませんでしたが、テスコ・ロータスは、ビッグC(以前の
カルフールも今は傘下)に次いで、それなりにやっていて、
収益も上げているようです。イギリス本国が侵食されて
いるようですね。