2016年2月下旬に入り、しばらくぶりに
動意が見えてきた。
SET(タイ株式市場)指数は、2月の3連休前の
19日(金)には1,320と1,300台に上昇し、1週間で3.4%上げた。
1日平均の売買代金も423億バーツ(1270億円)と
500億バーツ近くに増えてきた。
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昨年2015年1年間、タイの株式市場は、
ほぼ下げ続けた。
SET指数は、15年2月高値1,615から16年1月の安値
1,244へ1年間で23%の下落だった。
1,200台前半というのは2014年初めのボトム(1,224)水準だが、
長期化する景気の低迷を反映して、
株式市場の停滞が続いてきた。
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中国の景気停滞、先進国の需要不足、さらには
前政権のバラマキ政策の後遺症や商品市況の低迷と
四重苦となると、外需主導型のタイ景気は沈滞から抜け出せず
(3年連続で輸出額が伸びなかった)、
連れて、株価の基礎となる企業収益も伸び悩む。
昨2015年のタイの上場企業の企業収益を見てみると、
第3四半期までの9か月間の比較だが、
主要8産業553社の比較で、税引き利益は
前年2014年の同期間に比べ26%の減益になっている。
株価下落が、企業減益を映した形だ。
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2014年の11%減益に次ぐ2年連続の減益になりそうだが、
2014年はエネルギー・石油化学が足を引っ張ったのに比べ、
2015年は、エネルギーのさらなる減益に、鉄鋼、運輸(主にタイ航空)の
赤字が加わり、“常勝”銀行業も減益になるなど、減益幅を拡大しそうだ。
従って、株価も下がったが、企業莉益も下がっているので、
タイ株式のPER(株価収益率=株価÷一株利益)も割安になってはいない。
現在の実績PERは19倍ほど。歴史的に14倍以下ほどにならないと
割安とは見えない。
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ここ1週間の市場の上げの主役はタイ航空(THAI)であろう。
過去6日間の連騰で、8.05バーツから11.90バーツまで
5割近くも上げた。
この原油安で旅行の盛んな中で、タイ航空は昨年は
史上最高に近い赤字を垂れ流してきた。
国家企業の弊害が出て、コスト削減を余儀なくされる事態となった。
ところが、この2月下旬に発表された第4四半期の損益は、
40億バーツの税引き黒字に転換。これで2015年の年間最終赤字は
140億バーツ(420億円)ほどに減り、2014年の156億バーツの赤字を
かろうじて減らすこととなりそうだ。
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今2016年は、タイの企業収益はどこかの四半期で
底を打つかもしれない。
収益への寄与度の大きい産業を並べると、
タイはエネルギー・電力と銀行業が双璧で、
そのあとに通信業、石油化学、そして
不動産開発、建設資材、商業、食品業、運輸業などが來る。
多くの業種が2年間伸び悩んだので、今年中に
底を打つかもしれない(または3年連続減益?)。
航空業(運輸業)が、2016年黒字化するならば、
全体の企業収益動向にプラスの影響を与えよう。
また、タイは原油ガス輸入国なのに、
エネルギー価格の低迷は、企業収益全体にマイナスに
働いているようだ。意外に感じられる。
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2月下旬の株価動意では、やはりタイ市場を動かす
外国人投資家が買いに回っている。
1週間で62億バーツ(190億円)の買い越しとなっている。
過去1年の株価の下落で、PERこそ下がらなかったが、
タイ企業の配当利回りは上昇している。
5~6%(中には7~8%)の銘柄が目立つようになり、
折からの低金利の中、タイの証券会社は、高配当を魅力に
株を勧めているようだ。
確かに、企業収益が底打ちし、株価の下落も限られてくるなら、
5~6%の利回りは魅力であろう。