タイ語新シリーズ
「シーン毎のボキャブラリー・熟語」シリーズ
の第8回。
いろいろな場面ごとに、
単語だけではなかなか覚えられないし、面白くないので、
「熟語」で興味を持って覚えていくことにする。
もちろん、「声調」が大事なので、
「綴り」(サゴット)も理解していくことは忘れない。
第8回のシーン別タイ熟語は、
「身体動作」にかかわる熟語の4回目で最終回。
「微笑む」や「笑う」から、感情の動作を探って見よう。
****
㉑「微笑む」 「(ローイ・)イム」 (rɔɔiˑ)yím 「(รอย)ยิ้ม」
タイは微笑みの国と称される。
程度問題は別にして、笑いのうちでも微笑みは、
上座部仏教で最も肯定される。
微笑む仏像はあっても、ゲラゲラ笑う仏像は見ない。
「微笑む」は、「(ローイ・)イム」(rɔɔiˑ)yím「(รอย)ยิ้ม」である。
微笑むの「イム」は、yの音の入ったイム。
「お腹が一杯」の「イム」ìm「อิ่ม」とは、
高声と低声の違いもあるが、区別すること。
「イム」だけで「微笑む」となるが、「ローイ・イム」とすると、
より分かりやすくなる。
「ローイ」rɔɔi 「รอย」は、「しわ」という意味だから、
「ローイ・イム」は、口元にちょっとしわを寄せて微笑むということか。
同じ「ローイ」でも、「百」の「ローイ」rɔ́ɔi「ร้อย」は、高声。
ちなみに、「微笑みの国」は、「ディン・デーン・ヘング・ローイ・イム」
dinˑdɛɛnˑhɛ̀ŋˑrɔɔiˑyim「ดิน แดน แห่ง รอย ยิ้ม」である。
「ディン・デーン」は、「国土」。
「デーン」は、「赤」の「デーング」dɛɛŋ「แดง」とは、
末尾がnとŋで違うだけ。
「ヘング」hɛ̀ŋ「แห่ง」 は、「~の」の接辞。
通常の「~の」の「コーング」khɔ̌ɔŋ「ของ」(「物」の意味もある)よりも重々しい感じ。
「ヘング」は短く発音され、
「乾いた」の「ヘーング」hɛ̌ɛŋ「แห้ง」(長母音)と区別される。
タイの中央銀行「タイ国立銀行」は、
「タナーカーン・ヘング・プラテート・タイ」
tha naa khaanˑhɛ̀ŋˑpra thêetˑthai「ธนาคาร แห่ง ประเทศ ไทย」である。
㉒では、ふつうに「笑う」は、と言うと、「ホアロッ」hǔaˑrɔ́「หัวเราะ」になる。
「ホア」には、「頭」のほかに、「笑う」という意味がある。
また、「ロッ」は、「パイロッ」(音楽がきれいな)などにも使われ、
ほっとした語感がある。
「ホアロッ・トーング・ケング」 hûa rɔ́ˑthɔ́ɔŋˑkhɛ̌ŋ「หัวเราะ ท้อง แข็ง」。
‘お腹が固くなるまで笑う’とは、「笑いが止まらない」という意味になる。
なお、lineなどでの「コー・クワーム」(メッセージ)のやり取りでは、
「笑い」には、「5555」すなわち、「ハハハハ」を使う。
㉓「歌う」と「叫ぶ」と「泣く」と「鳴く」と「鳴る」、
いずれも、「ローング」rɔ́ɔŋ「ร้อง」である。
ただし、「泣く」には、「ローング・ハイ」rɔ́ɔŋˑhâi「ร้อง ไห้」が用いられる。
「ハイ」は、「与える」だから、‘歌ってあげる’がなぜ「泣く」になるのか?
「ハイ」には、別に、「泣く」という意味があった。
その前に、R「ร」で始まる「ローン(グ)」には、4つあることを確認しておこう。
なお、「試す」の「ローング」は、「ลอง」lɔɔŋで、L「ล」である。
まず、「歌う」の「ローング」rɔ́ɔŋ「ร้อง」。高声だ。
「ローング・ターオ」(靴)の「支える」を意味する「ローング」rɔɔŋ「รอง」。平声。
「ローング・リアン」(学校)の「大きな建物」を意味する「ローング」rooŋ「โรง」。
同じく平声だが、こちらの「オ」の音は、o「โ」である。
「暑い」の「ローン」rɔ́ɔnร้อนは、n「น」で終わる。
「歌う」と「暑い」の「ローン(グ)」の違いは、語尾の違いだけだ。
「歌う、叫ぶ、泣く、鳴く、鳴る」の「ローング」rɔ́ɔŋ「ร้อง」の熟語では
5つほど覚えておこう。
・「ファー・ローング」fáaˑrɔ́ɔŋ「ฟ้า ร้อง」。
‘空が鳴る’とは、つまり「雷が鳴る」ということである。
・「コー・ローング」khɔ̌ɔˑrɔ́ɔŋ「ขอ ร้อง」。
‘歌うように、泣くように乞う’と言うことは、「懇願する」と言うこと。
・「リアック・ローング」rîakˑrɔ́ɔŋ「เรียก ร้อง」。
同じく‘歌うように、泣くように呼ぶ’と言うことは、「要請する、要求する」と言うこと。
・「ローング・リアック」rɔ́ɔŋˑrîak「ร้อง เรียก」
前者と単語が前後に入れ替わっているが、
‘強く発声し、呼ぶ’と言うことで、「叫ぶ」になる。
・「ローング・リアン」rɔ́ɔŋˑrian「ร้อง เรียน」
まるで、「学校」のように聞こえるが、‘強く発声し、学ぶ!?’とは何だろう?
実は「リアン」には、学ぶの他に、手紙などで「~様に言上する」という意味がある。
よって、“強く発声し、言上する”で、「不平を言う」となる。
「ローング」rɔ́ɔŋ「ร้อง」の熟語を5つほど紹介したが、
ローングは、「強く声を出す」という点で共通しているようだ。
㉔タイの上座部仏教では、「微笑む」のはいいが、
「怒る」のは避けるべきことと教えられている。
確かに、「喜怒哀楽」とは言うものの、怒ってろくなことはない。
相手の怒りに対しては、「我慢する」か、「パスさせる」か、「そのまま送り返す」のが
良いようだ。
「怒る」、「怒った」には、「グロート」と「モーホー」がある。
両者の違いはよく分からないが、
「グロート」kròot「โกรธ」は、「むかつく、イライラする」という感じなのに対し、
「モーホー」moohǒo「โมโห」は、「カッとなる、カンカンに怒る」といったニュアンスだ。
いずれにせよ、自分が怒らないためには、“人は人。自分は自分”と
割り切って、自分の価値観が人に持たれていないことを気にしないことだろう。
これと関連し、「自尊心」は、他人に左右されるものでないことも割り切っておこう。
「グロート・チャイ・クワーム・ピット・コーング・コン・ウーン・
マー・ロング・トート・トゥア・エーング」
kròotˑcháiˑkhwaamˑphìtˑkhɔ̌ɔŋˑkhonˑʉ̀ʉnˑmaaˑloŋˑthôotˑtuaˑeeŋ
「โกรธ ใช้ ความผิด ของ คน อื่น มา ลง โทษ ตัวเอง」
「他人の間違いを用いて怒るのは、自らを罰することだ」となる。
なので、他人の間違いは「受け入れないで、そのままその人の家族にお返ししよう」
というのが、ブッダのユーモアに満ちた知恵である。
タイ人は、以下のように、怒りをそらしてしまう。
「チャン・ローレン・ローク・ヤー・グロート・ルーイ」
chǎnˑlɔ́ɔlênˑrɔ̀ɔkˑyàaˑkròotˑləəi「ฉัน ล้อ เล่น หรอก อย่า โกรธ เลย」。
「ローレン」lɔ́ɔˑlênは「ふざける」、「ローク」rɔ̀ɔkは「だます」。
「ジョークで言っただけだよ、怒ることないよ!」となる。
㉕体を揺する 「ヨーク・トゥア」yôokˑtua「โยก ตัว」。
「ロッキング・チェアrocking chair」は、タイ語で「ガオイー・ヨーク」
kâoîiˑyôok「เก้าอี้ โยก」と言う。
「ヨーク」は、「揺らす」と言う意味。ニューヨークとは関係ない。
「体を揺する」は、何のために揺するのかは別にして、「ヨーク・トゥア」となる。
運動以外では、あまりやらない方がよさそうだ。
以上で、身体動作編4回分を終える。
次回は、笑うや怒るはやったが、
心や感情にまつわる「感情動詞」の熟語を
やっていこう。
(続く)