タイ語新シリーズ
「シーン毎のボキャブラリー・熟語」シリーズ
の第9回。
いろいろな場面ごとに、
単語だけではなかなか覚えられないし、
「熟語」で興味を持って覚えていくことにする。
もちろん、「声調」が大事なので、
「綴り」(サゴット)も理解していくことは忘れない。
第9回のシーン別タイ熟語は、
今回から新たに、心や感情にまつわる
「心の動詞」の熟語を見ていこう。
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①「信用する」
人を簡単に信用してはいけないが(次に、
「騙す」が出てくる)、一定の付き合いを経て、
信用できる人は、出てくる。

「信用する」believe,trustの代表は、「チュア」chûa「เชื่อ」である。
英語のsureに似た響きがある。
ワンちゃんを散歩させるときのリード(紐)の
「チュアック」chʉ̂ak「เชือก」と音が似ている。
中子音字「象さんのチョー」ch「ช」のマイエーク「่」付きも、
「長母音(複合母音ウワ「เือ」は長母音)+k」も、落下声となる。
そのまま、「チュア・ワー~」chûaˑwâa~「เชื่อว่า~」(~を信じる)として使えるほか、
「チュア・ファング」chûaˑfaŋ「เชื่อ ฟัง」(聞いて信じる)で、「従う」という意味になる。
「スー・チュア」sʉ́ʉˑchûa「ซื้อ เชื่อ」は、‘信用で買う’、つまり「ツケで買う」こと。
「ヤー・パイ・チュア」yáaˑpaiˑchûa「อย่า ไป เชื่อ」。
「信用するな!」との警告となる。
この時パイを挟むのは、行ってしまうというニュアンスを出している。
「信じられない!アンビリーバボ!」は、
「マイ・ナー・チュア」mâiˑnâaˑchʉ̂a「ไม่ น่า เชื่อ」である。
すべて落下声で語呂が良い。
「ワイ・チャイ誰それ」wáiˑcai~「ไว้ ใจ~」もよく使われる。
‘誰それを心に置く’で、「誰それを信頼する」になる。
人を信頼する時に使える。

タイの格言に、少し長いが、面白いのがあるので紹介しよう。
「チャーング・サーン・グー・ハオ・カー・ガオ・ミア・ラック・
ヤー・ダイ・ワイ・チャイ・ナック」
cháaŋˑsǎanˑŋuuˑhàoˑkhâaˑkàoˑmiaˑrákˑyàaˑdâiˑwáiˑcaiˑnák
「ช้าง สาร งู เห่า ข้า เก่า เมีย รัก อย่า ได้ ไว้ ใจ นัก」と言うのがある。
「乗り物の象とコブラと古くからの召使と愛人、これらはあまり信じるな!」となる。
「チャーング・サーン」は、「乗る象」、
「グー・ハオ」は、「吠える蛇」でコブラのこと。
「カー・ガオ」は、「古くからの召使」、
「ミア・ラック」は、「愛する女」で愛人のこと。
「ヤー・ダイ~ナック」で「あまり~するな」となる。
昔のタイでは、それぞれに痛い目にあった人がいたのだろう。
②「信用するな」があるのは、「騙す」があるからである。
「ゴーング」kooŋ「โกง」 「騙す、ごまかす」である。
レバノンに逃げたゴーン氏のことではない。

「騙す」の「ゴーング」は、「先に」の「ゴーン」kɔ̀ɔn「ก่อน」とは、
「オ」の音と、末尾のŋˑnが違う。
また、「髭を剃る」の「ゴーン・ヌアット」koonˑnùat「โกน หนวด」とは、
末尾のŋˑnだけが違う。
「レン・ゴーング・ニー」lênˑkooŋˑnîi「เล่น โกง นี่」は、「おい、ズルだぞ!」になる。
「レン」は「遊ぶ」で、「レン・ゴーング」で「ごまかす」となる。
「ニー」は、注意を喚起する接尾辞、「~だぞ!」という感じだ。
「ゴーング・ゲーム」kooŋˑkeem「โกง เกม 」は、そのまま「ゲームでごまかす」。
「ゴーング・ギン」kooŋˑkin「โกง กิน」となると、
‘食べるのにズルする’で、「賄賂を受け取る」となる。
信用して裏切られる例として、
「スー・チュア・レーオ・ゴーング」sʉ́ʉˑchʉ̂aˑlɛɛoˑkooŋ「ซื้อ เชื่อ แล้ว โกง」がある。
「掛買いして、支払わない」となる。
もうひとつ、「騙す、欺く」には、
「ローク(・ルアング)」lɔ̀ɔk(ˑluaŋ)「หลอก (ลวน)」がある。
世界の「ローク」lôok「โลก」は、小さな口のoで別物。
「欺く」の「ローク」lɔ̀ɔk「หลอก」は、「人を騙す」こと。
「ルアング」luaŋ「ลวง」も「騙す」という意味である。
「話」の「ルアング」は、rのrʉ̂aŋ「เรื่อง」である。

「ローク・ルアング・ルーク・カー」lɔ́ɔkˑluaŋˑlûukˑkháa「หลอก ลวง ลูก ค้า」。
「ルーク・カー」(お客)を「ローク・ルアング」(騙す)。
「ナー・ワーイ・ラング・ローク」nâaˑwâaiˑlǎŋˑlɔ̀ɔk「หน้า ไหว้ หลัง หลอก」。
“前でワーイ(合掌)をし、後ろで欺く”。タイらしい表現だ。
日本語にも「面従腹背」という言葉があるが、
まさに、表面では同意して、裏で逆の行為をすることだ。
ここでは、出てくる4つの単語が、いずれも低子音単独字が
高子音化されている(หが頭に来る)という珍しいケースだ。
いずれも、低子音字のままでは、上記の声調を出せないので、
高子音字化されている。

「ローク・ミヤオ・マイ・ダイ・ローク」「หลอก เหมียว ไม่ ได้ หรอก」
“猫をだますのは無理だよ!”
rの「ローク」は、否定するのを強調する接尾辞「~だよ!」
なぜこういう言い方がタイにあるのか判らないが
(ミヤオは人の愛称だとも)、語呂がいいので載せておく。
ちなみに、「猫騙し」と言うのは、相撲の技にあるが
(立ち合い、相手の目の前でぱちんと手を叩く)、
実際の猫は、色の識別も視力も低いようので、
きゅうりでも猫の尻尾と間違いさせられるとか
(ならば、猫騙しはやさしいことになるが・・)。
③人を信用するもしないも、事実を「確認する」ことが大事な場合がある。
「確認する」(英語のconfirm)は、そのまま英語を使ってもいいが、
「ユーン・ヤン」yʉʉnˑyan「ยืน ยัน」である。

「ユーン」は「起立する」、「ヤン」は「支える」の意味があるが、
併せて、‘柱がきちんと立っているか確認する’ニュアンスである。
従って、「ユーン・ヤン」は、確認した後に続く「主張する」(insist)
としても使われる。
④確認すれば、「確信」に至る。
「確信した」には、「ネー(・チャイ)」と「マン・チャイ」があるが、
「ネー(・チャイ)」nɛ̂ɛˑcai「แน่ ใจ」の方が、軽くよく使われる。

「ヤング・マイ・ネー」yaŋˑmâiˑnɛ̂ɛ「ยัง ไม่ แน่」。「確かじゃないな!」
むかし、ゴルフのタイ語を覚えた時、
OBライン際に飛んで行ったボールに対し、この言葉を使った。
「やばいねー」と掛け合わせて覚えたものだ。
「ネー・ノーン」nɛ̂ɛˑnɔɔn「แน่ นอน」は、「確かに、もちろん」の意味で副詞的に
使われるが、「ネー・ノーン・ワー~」と、「確かなのは~である」
と、主語的にも用いられる。
「プア・クワーム・ネー・チャイ」phʉ̂aˑkhwaamˑnɛ̂ɛˑcai「เพื่อ ความ แน่ ใจ」。
“確信する事のために”、つまり「念のため」である。
「マン・チャイ」mânˑcai「มั้น ใจ」は、同じく「確信している」だが、
ネー・チャイより硬い感じがする(「マン」も「確か」と言う意味)。
「マン・コング」mânˑkhoŋ「มั้น คง」という言葉の方が、よく使われるかもしれない。
「コング」khoŋ「คง」は、「コング・チャ~」khoŋˑcà~「คง จะ~」
(たぶん~だろう。確率7~8割)の他に、
これと関連して、「以前のままの、変わらない」という意味があるので、
「マン・コング」mânˑkhoŋ「มั้น คง」で“変わらず確か”、「安定している」になる。
「国が安定している」、「プレーがコンスタントである」時などに使う。
⑤「同意する」「承諾する」「賛成する」。
「トック・ロング」、「ヘン・ドゥアイ」そして「ヨーム」が思い浮かぶ。
「トック・ロング」tòkˑloŋ「ตก ลง」は、‘下へ落ちる’だが、値段交渉などで、
落ち着き先を決めた時、「納得、合意する」といった調子で使う。
「ヘン・ドゥアイ」hěnˑdûai「เห็น ด้วย」は、“自分にもそう見える”という意味だから、
「賛成だ」ということ。

ソーシャル・メディア時代、SNSでの呼びかけがはやる。
「クライ・ヘン・ドゥアイ・チュアイ・ガン・チェー」
khraiˑhěnˑdûaiˑchûaiˑkanˑchɛɛ「ไคร เห็น ด้วย ช่วย กัน แชร์」。
ここでの「チェー」は英語のshare。タイ語ではshの音はchと一緒。
「賛同する人は、ぜひ共にシェア(拡散)してください」となる。

「ヨーム」yɔɔm「ยอม」は、相手の言うことを受け入れる、
「受諾する」ということだ。
‘用務員’だけの専売特許ではない。
「ヨーム・ペー」yɔɔmˑphɛ́ɛ「ยอม แพ้」。
「ペー」は、「負ける」だから、「ヨーム・ペー」は、‘負けを受け入れる’、
将棋などで、「参りました」というやつだ。
⑥「反対する」「否定する」
タイ語は、反対語(アントニム)、ことに否定的な反対語は、
あまり使わない。肯定語に否定の「マイ」を付けてすます。
あまり否定的なことは口に出さない文化があるのだろうか?
「良い」dii「ดี」の反対語の「悪い」(bad)は、「ラーイ」ráai「ร้าย」だと
教わるが、日常あまり使わず、「マイ・ディー」で済ましてしまう。
でも、「悪人」、「犯人」は、「コン・ラーイ」khonˑráai「คน ร้าย」、
「プー・ラーイ」phûuˑráai「ผู้ ร้าย」で、覚えておこう。

「悪い」という言葉には、「邪悪な」(ラーイ)という意味の他に、
「劣悪な」(レーオ)leeo「เลว」というのもある。
レストランなどで食べてみて、「悪くない」(そう不味くもない)と
言いたい時は、「マイ・レーオ」mâiˑleeo「ไม่ เลว」も使える。
「スアイ」(奇麗)sǔai「สวย」の反対の「キーリウ」(ぶす)
khíiriu「ขี้ริ้ว」もあまり使わず、
「マイ・スアイ」で済ます。心配りか。
反対語(antonym)は、タイ語では「カム・トロン・カーム」
khamˑtroŋˑkhâam「คำ ตรง ข้าม」と言ったところか。
「カム」は言葉。「トロン・カーム」は「正反対の」。
道路の反対側へ「横切る」ときに、「カーム」khâam「ข้าม」を使う。
「反対する」は、「マイ・ヘン・ドゥアイ」mâiˑhěnˑdûai「ไม่ เห็น ด้วย」でOKだ。
あえて肯定的な言葉を探せば、「カット・カーン」khát kháan「คัด ค้าน」だ。
チョコのカット・キットみたいだと思ったが、あれはキット・カットだった。
「反対デモをする」をタイ語にすると、「ドゥーン・カブアン・カットカーン」
dəənˑkhàbuanˑkhátˑkháan「เดิน ขบวน คัด ค้าน」。
「ドゥーン」はあいまい母音の「歩く」、「カブアン」は「行列」。
「ドゥーン・カブアン」で「デモ行進をする」となる。

「否定する」「拒否する」は、「パティセート」pàtisèet「ปฏิเสธ」という
少し難しい言葉になる。

会話なら、「マイ・アオ」とか「マイ・ダイ」とか
否定の「マイ」で済ませてしまう。
第9回はここまで。
次回は、「心の動詞」2回目にあたるが、
「言う」「話す」「語る」「告げる」などについて、
面白い熟語を見つけていこう。
(続く)


